遺言の種類

一口に遺言と言っても、民法では普通方式で3種類、特別方式で2種類と複数定められており、それぞれ方式に従って作成されなければ法的拘束力がありません。

民法で定められている普通方式、特別方式の遺言の種類は以下の通りです。
今回は、この中の普通方式の遺言についてそれぞれの長所、短所等を交えて説明していきたいと思います。

・自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者がその全文、日付及び氏名を自書し、押印することによって作成することができます。
平成30年の民法改正により、自筆証書遺言の方式が緩和され、財産目録については自書しなくて良いとされましたが、自書によらない財産目録を添付する場合は、ページ毎に署名押印する必要があります。
また、自筆証書遺言に記載する日付は、客観的に確定できるものでなければ認められないとされており、「令和3年6月吉日」というような記載は認められないと解されています。
年月日を正確に記載しなくても、客観的に確定できるものであれば認められるとされてはいますが、年月日は正確に記載するのが間違いがないでしょう。
続いて押印についてですが、こちらは指印や三文判でも問題ないとされていますが、こちらも効力の疑義を生じさせてないためにも実印を使用するのが望ましいかと思われます。
尚、自筆証書遺言の執行時には、通常、家庭裁判所の検認手続きが必要でしたが、令和2年7月10日より開始した法務局での「自筆証書遺言書保管制度」を利用することで、検認の手続きが不要となりました。保管の手数料も3,900円と安価であり、今後自筆証書遺言をされる方には、積極的に活用されることをお勧めしたい非常に有用な仕組みだと感じます。

・公正証書遺言
公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもと、遺言者が公証人に遺言の趣旨を口授し、公証人がその内容を筆記したものを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させて、遺言者及び証人が筆記の内容が正確なことを承認した後、各自が署名押印、最後に公証人が上記の方式に従って作成したことを付記して署名押印することで作成されます。
作成する際は、基本的には公証人役場へ証人とともに行く必要があります。
尚、証人には、未成年者、推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族、公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人はなることができないので注意が必要です。
尚、公正証書遺言は公証人のもとに原本が保管されるので、変造や紛失の心配がなく、遺言執行時には検認の手続きが不要です。
公証人の手数料や手続きに手間がかかりますが、その分メリットも大きい遺言の方法と言えるでしょう。

・秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言者が遺言書に署名押印し、その証書を封じ、証書に用いた印章でこれを封印して、公証人1人及び証人2人以上の前に提出し、自己の遺言である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述し、公証人がその証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙にして記載した後、遺言者及び証人とともに署名押印することで作成されます。
秘密証書遺言の場合、遺言者自身の署名押印が必要ですが、自筆証書遺言とは異なり、本文については、代筆やワープロ等の方法によることも可能です。
また、遺言書の存在は明らかにしながら、内容については秘密とできるメリットがある反面、自身のみで作成することにより、記載内容の疑義が生じるといった可能性がある等のデメリットもあります。
尚、遺言の執行には、家庭裁判所の検認が必要とされている点も注意が必要です。

以下、普通方式の遺言それぞれの長所、短所を簡単に表にしましたので、参考にしていただければ幸いです。

遺言をするなんて縁起が悪い。といった考えを持たれてる方も多くおられるかと思いますが、遺言はご自身の思いを伝えるだけでなく、遺されるご家族間のトラブル、いわゆる「争続」を回避するためにも非常に有効な手段となり得ますし、個人的には、生前に自身の亡くなった後のことを考え、自身の資産の状況や思いを時間をとって整理することは、その後の人生を豊かにする一助になると感じます。
ただし、形式不備や遺留分を無視した遺言等をしてしまった場合には、逆効果となる可能性もありますので、注意が必要です。
今回は、遺言の種類に関して説明させていただきました。

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